竹之内塾 壁打ちZoom 2026.03.24

人を動かすリーダーの技術

3人の受講生の悩みから学ぶ、経営者のコミュニケーション術

竹之内教博(メイン講師)× 谷本社長(ゲスト・従業員700名の経営者)

Questions
Teachings
Action Items

Aさんの質問

Aさん
創業55年のうなぎ屋3代目。年商3.5億、社員5名+パート30名。自分が99%焼いていた状態から竹之内社長に会って自走する組織を目指し始めた。評価制度の構築をコンサルと進めているが、自分の見えている範囲でしか考えられていない感覚がある。
Question

100年続く会社にするために今の自分に足りていない部分と、自走する組織としていない会社の決定的な違いを教えてほしい

Teaching 01

評価制度は「仲間」を壊す

竹之内社長は即座に評価制度の導入に反対した。「評価制度ってなぜダメかというと、人とのつながりを希薄にする」。ありがとうとか助かってるよという言葉がメインであるべきなのに、評価制度を入れると給料のために働く機械的な関係になってしまう。100名、200名の組織になってやっと入れるかどうか。30名程度の組織で評価制度は早すぎる。

さらに、奥さんへの評価制度のたとえ話で会場を沸かせた。「仲間だと思ってたら評価制度なんてつけないよね。奥さんに対して『評価制度ちょっと作ったんだよな。衣類に関して畳んだら何点っていうのをつけて、それでお腹を決めようと思ってるのよ』って。これ言った途端にもう離婚になるんだから」。俺のできないことを補ってくれているのが奥さんであり、逆に奥さんができないことは俺が頑張る。仲間だよね、俺らチームだよね。それを言葉でちゃんと伝えているかどうか。

仲間だと思ってたら評価制度なんてつけないよね。奥さんに対して評価制度作ったって言った途端にもう離婚になるんだから。

-- 竹之内教博
Teaching 02

現場を抜ける覚悟を決める

Aさんが99%焼いている状態について、竹之内社長は「抜けないとダメだ。強制的に来月から週3日しか出ない。決める」と断言。完璧にしてから抜けるのではなく、抜けてから問題を解決する。「育てるっていうのは、育ててから抜けるっていうよりも、抜けなければならないというタイムリミットを決めたら、必ずイノベーションが起こるんで新しい発想が生まれる」。覚悟が決まっていないことが問題。

「交通事故にあったと思えばいい」とまで言い切り、人を信じられていないことが本質的な問題だと指摘。実際にAさんが無理して抜けてみたら、社員が「今までは言わないとやらなかったところ、これもやってきました」と報告してきた。

育てるっていうのは育ててから抜けるんじゃない。抜けなければならないタイムリミットを決めたら必ずイノベーションが起こる。覚悟が決まってないんだよ。

-- 竹之内教博
Teaching 03

谷本社長の「ありがとうギフト」制度

谷本社長は自社の経験を語った。「評価制度ではなくて、ありがとうギフトを送るっていう制度を入れた」。アルバイトの子であれ社員さんであれ、誰かに対してその日嬉しかったことの感謝カードを送り合う仕組み。カードをたくさん送った人は「みんなに感謝できている」、もらった人は「みんなに認められている」。この仕組みでチームワークが向上し、30人の壁、50人の壁、100人の壁を越えて、今や700人の組織になった。

竹之内社長は「やっぱり会社を大きくした人は同じだな」と頷き、評価制度を急いで入れることへの警鐘を改めて鳴らした。部署も右腕も役員も「全部自然発生するもの」であり、無理して作る必要はない。

ありがとうギフトを送るっていう制度。アルバイトの子であれ社員さんであれ、その日こういうことが嬉しかった、ありがとうっていうカードを送っていく。それがあったから今がある。

-- 谷本社長
Teaching 04

「仲間」意識こそ組織の核心

別の受講生(鍼灸整骨院5店舗、20名)のスタッフとの関わり方の質問を受けて、竹之内社長はさらに深く展開した。「上司って部下をコキ使ってる相手、動いてくれる相手じゃない。仲間かどうか。仲間って思った途端にみんなが頑張れる」。

具体的な声かけの例も示した。「お前ちゃん、佐竹ちゃん、久しぶりー、元気してた?あの時こうだったよねー、うわ元気そうで嬉しいよ」。敬語は使いつつも、「俺ら仲間で、よく頑張ってくれてるよね」という雰囲気を出す。これが文化になれば、店長に伝染し、組織全体の空気が変わる。

谷本社長も、自分にできないこと(介護でおむつを替える等)をやってくれている社員への本心からの感謝がきっかけで、愛の意味が分かったと語った。「トップから愛を向けてあげないと、絶対部下から向けてくることはない」。

上司って部下をコキ使ってる相手、動いてくれる相手じゃない。仲間かどうか。仲間って思った途端にみんなが頑張れる。

-- 竹之内教博
Teaching 05

PDCAの「C」には明るい未来をセットで

別の受講生へのアドバイスの中で、竹之内社長はPDCAの注意点を語った。進捗確認で数字が落ちると改善点や指摘が多くなり、空気が悪くなる。「PDCAっていうのは回すとどうなるかというと、必ず成長して明るい未来が待っている。これを明るい未来をワンセット伝えなさいっていうのがPDCAのCする時の注意点」。

具体例: クレームがあった時、「なんでクレームになったのかな?」と聞くだけでは詰めになる。「もしこれ改善したら、クレームがなくなって最高になると思うんだよ。どんなお客さんからも慕われるようになると思うから、ちょっとこれ見直していきたいね」と未来を先に見せてから、原因究明に入る。

PDCAのCする時は明るい未来をワンセット伝えなさい。「改善したらクレームがなくなって最高になると思うんだよ」と言ってからチェックし始める。

-- 竹之内教博
Teaching 06

愛と情熱の伝え方

「増やすとか減らすとかじゃなくて、そもそも機械的なことをしないで、愛と情熱が大事」と竹之内社長。全員と話せなくても、店長と話している時に「店長頑張ってるね」「このお店が本当すごいよ」と大きい声で言えばみんな聞こえる。「そんなんでいいんだよ」。

竹之内社長自身、オンラインサロンの全員と関わっているわけではないが、温かみや愛を感じてもらえている。それは「すごいね」「素晴らしいよ」というジェスチャーや振る舞いから伝わる熱さ。静かなタイプのリーダーにこそ、「もっと情熱的な自分を見せろ。恥ずかしがらずに本当に本当にありがとうと言え」と力強くアドバイスした。

別に全員と話さなくても、店長さんと話してる時に「店長頑張ってるね、このお店本当すごいよ」って大きい声で言えばみんな聞こえるでしょ?そんなんでいいんだよ。

-- 竹之内教博
Action Items

Bさんの質問

Bさん
都内で障害福祉事業50施設を運営。竹之内社長のID概念に興味を持ち、実践に活かしたいと考えている。
Question

谷本さんも竹之内先生も、相手のIDを素早く察知して自分のどういうポジションで自分を演じるか・表現するかというのがすごく勉強になる。それをできるようになったのは何かきっかけがあったりするのか、コツみたいなものがあれば教えてほしい

Teaching 01

IDとは何か -- 人は場面ごとに「自分」を切り替えている

竹之内社長が体系的にIDの概念を解説した。「IDっていうのは人はそれぞれIDをコロコロ切り替えて生きている。会社で上司がいる時には自分は部下だし、自分の部下の前では上司っていうIDに変わる。家に帰ったら奥さんに対しては夫、子供に対しては父になる」。

このIDの切り替えがスムーズにいかないとコミュニケーションエラーが起きる。例えば、お互いが自分を「上司」だと思っていたら、タメ口を使われただけで不快になる。上司と部下の関係でも、部下が自分を対等だと思っていたらすべての指示が「上から目線」に感じられてしまう。

Teaching 02

夫婦関係のID分析 -- 「王様と家来」問題

竹之内社長は家庭でのID問題を具体的に掘り下げた。「奥さんが結婚する時って、たぶんこの王様のIDの頼りがいがあるとか守ってくれるっていう優しさに惹かれた。王様ってそういうもんでしょ」。しかし結婚後、夫が奥さんを「家来」というIDで見始めると、行動を制限したり口答えに腹を立てたりする。

「家来は何をしてても俺のことを最優先にしてくれないとダメだ」というIDでいるから、奥さんの友達との時間や仕事を嫌がる。これがDVの構造にもなり得る。対策は「チームメイト」のIDに切り替えること。チームメイトなら「俺のできないことを補ってくれている存在」であり、奥さんの行動を尊重できる。

Teaching 03

IDの不一致を修正する -- PDCAのCができるようになる

「IDの違いだと思ったら自然とそういう言葉が出てくる。失敗した時のPDCAのCをできるために僕はIDを教えている」と竹之内社長。

具体例: 仲間だと思って注意したのに相手が「偉そうに言われた」と感じた場合、その瞬間自分が「先生」のIDになっていたと気づける。仲間のIDなら「お前のこと大好きでさ、一つだけ言いたいことあって聞いてくれる?」という言葉になるはず。

谷本社長は「物差しの尺度が細かい人がIDを使い分けられる」と補足。経験を積んで尺度を細かくすることが、多様な人と上手く付き合う秘訣。

IDの違いだと思ったら自然とそういう言葉が出てくる。失敗した時のPDCAのCをできるために僕はIDを教えているから。

-- 竹之内教博
Action Items

Cさんの質問

Cさん
複数事業の展開を考えている経営者。新しい分野への挑戦に不安を感じている。
Question

お二人とも複数の事業を展開されているが、最初の事業から二つ目の事業に展開する時に、畑違いなところに展開する時の不安はなかったのか。どんなタイミングで進出していくのか、どういう基準で事業を選んでいくのか

Teaching 01

谷本社長の事業展開史 -- 幹から枝葉を広げる

谷本社長が自社の歴史を赤裸々に語った。創業は人材派遣。派遣先の一つにNTT西日本のフレッツ光の販売があり、社員教育の営業研修が開花して営業成績が上がった。「フレッツ光もしかり、ウォーターサーバーもしかり、太陽光もしかり、オール電化蓄電池、全てにおいて日本一販売した」。

しかし、「キャッシュバック合戦になって自分たちの首を絞める」パターンを繰り返し、流行り廃りのビジネスへの焦りが生まれた。そこから介護という全く違う業界に参入。「関連ビジネスで足腰を鍛えてから全く関係ない異業種に参入」というのが谷本社長の戦略。

足腰を鍛えずに急成長したベンチャー企業は「大体10年未満には株主に介入されて死んでいる」と警鐘を鳴らした。

関連ビジネスで伸ばしていきつつ、自分の経験値を豊かにしてから、全く関係ない異業種に参入。足腰鍛えずに急に上場しちゃった子たちの未来って、大体10年未満に株主に介入されて死んでいる。

-- 谷本社長
Teaching 02

経営者の核能力は「人を動かす力」

竹之内社長がこのセッションの本質を突いた。「畑違いって自分が得意じゃない部分っていう意味だと思うけど、自分の得意なものが経営になったらすべてが経営。経営者の能力ってコミュニケーション能力が一番必要。要するに人が自分の思い通りに動いてくれるっていう力」。

谷本社長が介護にいけたのは、営業で培った「人に教えたり人を使うということが自分はできるっていう自信があったから」。つまり、畑が違っても「人を動かす」という能力があればどんな事業でもできる。

「美容室を開こうと思える。花屋さんだってそう。カフェでも自分でコーヒーを入れるレシピがわからなくても、入れ方を教えてもらってそれをさせて接客させることができる。教育と人を動かすという能力を身につけるのがめちゃくちゃ大事」。

経営者の能力ってコミュニケーション能力が一番必要。人が自分の思い通りに動いてくれるっていう力。これがあると、畑違いのことが得意な人を動かすことができる。

-- 竹之内教博
Action Items

相手を仲間と思えているかどうか

このセミナーを貫く一本の柱は「人を動かすこと」の本質。評価制度ではなく感謝の言葉。序列ではなく仲間意識。指摘ではなく明るい未来。機械的なシステムではなく愛と情熱。経営者として従業員と、家族と、仲間とどう接するか。その答えは全て「相手を仲間と思えているかどうか」に集約される。